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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
封筒の住所を確認して、大至急で版下を作ってカラーコピーで印刷した案内チラシもOK。あとはお詫びも兼ねた案内状を、社長に認可して貰うだけだ。前に社長に言ってその通りに作ったものだから、社長がお昼寝から目覚めるのを待って、事後承諾ということで内容物を三つ折りにして、三時。
あたしは二階に上がる。
いつも秘書室の受付の子がいるのに、今はいない。秘書が真っ先にやめていった現実。三橋さんは今笑顔でいれるのだろうか。
「社長、鹿沼です」
コンコンとノックしたが、応答がない。
眠りこけているのだろうか。
出直した方がいいか、いやだけど金曜日の今日の郵送に間に合わせたいと思い、思い切ってドアを開ける。
「社長?」
机の上に突っ伏している社長の姿がある。
「社長、すみません~」
いつもすぐ起きるのに、起き上がらない。
社長の手が伸びたまま、電話機の受話器が机の外に落ちている。
……なにかおかしい。
「社長?」
間近で読んでも応答がないから、腕に触れてみた。
椅子がくるりと回り、社長の顔が見えた。
「社長!?」
そこには真っ青な顔色をした、意識のない社長があった。
「しっかりして下さい、社長、社長!?」
かろうじて息と脈はある。
だが弱い。限りなく途切れそうなほどに。
「社長!!」
やだ、社長が……ねぇ、なんで!?
カタカタ震えながら、思い出すのは課長の顔だった。
助けて欲しい。
だけど、あたしがしっかりしなきゃ!!
あたしは深呼吸しながらサーバー室の内線にかけ、出来るだけ気丈な声で出た課長に言った。
「課長、すみません。社長が倒れているので、救急車呼びます」