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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
「鹿沼、香月!! 専務も、遅くなってすみません!」
その時、結城が走ってやってきた。
あたしは震える唇を噛みしめて、結城の手を取った。
「結城。……聞ける?」
結城は目を細めた。
「そんなに悪いのか、社長」
「……家族が聞くべきよ。結城が聞かなきゃ駄目だ。だから待ってた。あたしも一緒に行くから、だから聞こう?」
結城の唇が震えた。
「私も聞きます」
「俺も行く」
課長と専務が硬い顔で言うと、結城は強ばった顔で笑った。
「ありがとう。心強い」
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狭い空間にぎゅうぎゅうとあたし達4人が入る。医師の前にある回転椅子に腰掛けたのは結城だ。あたしはその横に立った。
結城とあたし達を見渡して、静かな口調で医師は言った。
「胆嚢がんが、かなり進行してます」
医者がCTの結果だと告げながら、レントゲン写真のような白黒の写真フィルムを電気をつけたパネルに埋めるようにして貼り付けていく。
「がん?」
結城が顔を歪めた。
「はい、月代さんは10年前に精巣腫瘍で陰嚢を取る手術をして、その時がん細胞の転移が認められず。二ヶ月に一回の検査をしてきましたが、ここ数ヶ月で左胸の肋骨あたりが痛いということで検査をしてみたら、胆嚢にかなり進んだ悪性腫瘍が見つかりまして」
転移……。
「……かなり悪いんですか?」
「残念ながら、悪いです。胆嚢という場所もさることながら、ここまで進行していては、手術でも除去出来ません。しかも、肝臓に転移も見られてます。かなりの痛みがあったと思いますよ、処方はしているのは、ほぼ麻薬といっていい強度の鎮痛剤です。もうそんなものではないと、彼の痛みを取り除くことが出来ない」
結城の手が震え、あたしもまた震える手で握った。
お互いのひんやりとした手が気持ち悪いほどだ。