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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 

「今回白血球も血小板も異常値を示していて、胆嚢炎を引き起こし腹膜炎も併発しています。敗血症にならないようにと抗生剤の点滴もしていますが、熱も高くなっており予断を許さない状況です」

 そういえばここ数日社長は、お腹を手でさすっていた。

 美味しいものを食べ過ぎたなど笑うから、今そんな悠長な場合かと、あたしぷりぷりしていたのに。

 がんからくるものか、あるいは付加した炎症のせいか、社長はかなりの痛みを感じていたのだ。

「この炎症がよくなったとして、どれくらいなんですか? 彼の命」

 結城がまっすぐな目で、医者を見た。


「もって二ヶ月」


 心臓を殴られたかのような衝撃に、思わず流れる涙が止まらない。


「どうにか出来ないんですか? 治療できないんですか!?」

「ここまで進行してしまっていては、手の施しようがないというのが正直なところです。既に肝臓に転移していて、そちらの手術をしようにも、恐らくいたちごっこのようになり、体力が消耗するだけ。また、血液内が異常値を示す以上、手術しただけで命に関わる危険性もある」

「余命の話、本人は知っているんですか?」

「はい。がんがわかった時点で告知しました。月代さんは身体に負担をかけるような放射線治療などして寿命を縮めるくらいなら、このまま生きたいと。先のがんで覚悟はついているから、だから願わくば、痛みのないように今年いっぱいくらいは生きたいと。それで痛み止めを処方しておりました」


 社長はどんな思いで告知を聞いていたのだろう。

 どんな思いで、いつもと変わらぬ姿を会社で見せていたのだろう、


 社長――。
 
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