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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
「ただの友達で満足しなさいよ! 欲深い男は嫌われるから! ちなみに、親友の座と、私の陽菜はあんたなんかにあげないからね、あっち行きなさい、しっしっ!」
衣里が後ろからあたしを抱きしめ、結城に向けて手の甲を振った。
「あはははは、鹿沼は難攻不落だな」
結城は立ち上がりながらこちらに寄り、上からあたし達を見下ろした。
「だけど、男ってそういう困難多い方が、やる気出て燃えるって、知ってた?」
微笑みながらもどこか艶めいた眼差しを食らったあたしは、ふいにいつも思い出さないようにしている、満月の時の結城の顔を思い出して、顔を俯かせてしまった。
それに結城がふっと笑った音がして、結城の手があたしの頭の上にぽんと置かれた。
「八時半だ。先に行ってる」
八時半――。
「あたしもいかなきゃ、課長に言われてるんだそういえば」
「なにを?」
結城の表情が少しだけ険しくなった。
「資料室で寝ているかもしれないから起こしてくれって」
「寝てる……?」
「うん。なんだか昨日寝れてないみたい。じゃあ行くわ!」
駆け出すあたしは、結城の曇った表情も、まだ香月朱羽を見ていない衣里の怪訝な顔も気づかなかった。