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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 

「はは、ははは……」

 小柄なのにパワフルで泣けてくる。

 専務が沙紀さんを寄越したのがわかった気がした。

 このひとは強い。

 笑いながら泣けてくる。いや、泣きながら笑っているのか。

「ごめんなさい、涙が止まらなくて」

「いいのよ、ほら朱羽くん慰める!」

「言われなくてもわかっていますよ」

 課長にくすりと笑いながら、ふと気になったことを聞いてみた。

「沙紀さん……。社長が忍月に居た時、結婚した女性と息子についてなにか言ってた?」

「ああ、渉と朱羽くんが入ってくるまでは、ダントツで部長が女に人気あってね、それが渉が帰国したあたりで、突然入籍してすぐ相手が死んだとショッキングなことを言い出して、皆どうしていいのかわからず、その件には触れなかった。それからすぐに部長は、ムーンに独立して退社しちゃったわ」

「沙紀さんは?」

「勿論訊いたわよ。大丈夫かって。そうしたら、息子がいてくれるから大丈夫だと。嫌われているけどね、と笑われて」

 結城か。

「奥様の具合が悪いのは、既にご存知だったようよ。それを承知に籍を入れたと。知り合ったのは病院だと言っていたから、今思えば部長、がんの体調不良かなにかで病院通っていた時に、知り合ったのかも」

 結城のお母さんは入退院を繰り返していたと言っていた。

 同じ病院で出会う可能性がないとは言い切れない。


「部長、こうおっしゃられてたの。病巣を取ったから自分はもう子供を作ることは出来ないけれど、息子の成長する様を見れるのは実の子のように嬉しいものだと。それが結婚した幸せの意味なんだろうと」



「なんだよ、それ……」


 いつの間にか結城が立っていた。


「なんでそんなことを他人に言ってるんだよ、なんで……っ」


 死んでしまっては伝わらないものも、生きている人間を通せば、伝えたい相手に伝わっていく。

 そう思うと、なにか心が苦しくて。

 誰かが死に、誰かが生きている……そんな状態になるのが。

 どうしてひとは、窮地にならないとひとの心に気づかないのか。

 ……どうしてひとは、取り返しのつかなくなった危機に、相手の真情を知るのだろう。
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