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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon

――そして月代さん、どうか朱羽の……になって下さい。こんなこと頼めるの、月代さんしかいないんです。他の奴に朱羽の……はさせたくない。俺のために、どうか引き受けて頂けませんか!? この通りです!
朱羽のために、俺は尊敬する月代さんを病気にさせたようなものだ。
余命宣告を聞くことになろうとは――。
――……プールで社長に言われたんです。もしも自分になにかあった場合は、結城に後を継がせろと。衣里を泣かせるなと。……言われたのに、長くはないと。
俺は専務室の壁をがんがんと殴って、殴った腕に頭をつけた。
ちくしょう、泣けてくる。
午後十時――。
遣わせた沙紀から連絡がない。
沙紀は強い。弱い人間を底辺から引っ張り上げる力がある。
あれだけ派手に泣いていたカバや衣里、そして結城の力になれればと行かせたけれど、大丈夫だろうか。
沙紀と朱羽があの三人を支えてくれればと思うのだが……。
俺はスマホの画面を出し、まずは沙紀に電話をかけた。
『はいは~い』
「沙紀か、俺だ。そっちになにか変わったことは?」
『部長はまだ目を覚まさないわ。結城くんと衣里ちゃんが部長から離れないから、今朱羽くんと陽菜ちゃんが無理矢理につれて、ソファとゲストルームのベッドに横にさせたわ』
「そうか。医者はなにか?」
『炎症の状態は、若干だけど良くなってきたみたいだから、とりあえずは人工呼吸器の危機は免れたわ。意識戻るの、時間の問題だって言ってた』
「よくなっているのならよかった。……仕事の帰りにすまないな」
『いいのよ、私だって気になる……ちょっと、それ私のよ!!』
「どうした?」
『今、病院内のコンビニに来て飲み物を買おうとして……はあああ!?』
「おい、沙紀?」
『だから、その一本しかないジュースは私が買うの! 先に私が手を出したじゃないの、なんで無理矢理持って行くのよ! 女相手に遠慮もない……子供じゃないから大人に従わなくたっていいじゃ……私28歳の大人なんだからこの時間起きててもいいでしょう!? 疑うなら私の免許見なさいよ、ほらほら!』
「沙紀!」
誰かと喋っているらしい。
低い男の声が聞こえてくるが、内容までは聞き取れない。

