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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 

『……俺の元では彼女、笑おうとして絶対泣かなくなりました。逆にふたりの元で泣いている。それが、俺には歯がゆくて……。俺、彼女に気を遣わせるだけで役に立ってないと思ったら、なにも出来ない自分が……嫌だな、と。彼女を包める、大人に……なりたい……』

 ああ本当にこいつ、なんでこんなに可愛いんだろう。どんな顔してこんなこと言ってるんだよ、俺照れてきちまったじゃねぇか。

 カバよ、お前は貴重な場面を見逃しているぞ。

「逆に言えば、お前にだけは気丈に振る舞っているということは、お前は結城と違うんだろうさ。ポジティブに行け」

『……はい』

 なにやら沈みがちの朱羽の声に、俺はくすりと笑った。

「なんだ、まだなにかあるか?」

『……彼女だけではなく、結城さんも真下さんも可哀想で。どれだけ社長を慕っていたか、わかるから』

「うん」

『俺もあの社長好きです。会社に入る前に、俺言われたんです』

 "鹿沼と結城と真下とタッグを組めば、面白い世界が見れるぞ"

『結城さんと組んで仕事が面白いと思えました。だから変わりゆく会社を、社長に見て貰いたいです』

「……お前がそんなことを吐露するの珍しいな。感化されたか、元気なカバ達同期に。……恋愛以外に、感情が出てきたか」

『かもしれません。俺があの輪に呼ばれないのが、寂しい……そう思います』

「ふふ、少しずつ、変わって行けよ朱羽。じゃないと、俺が無理してムーンを呼び寄せた意味がなくなる」

『……はい、渉さんと社長には感謝してます』
 
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