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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon

――結城、あたし流されたくない。
キスをしようとした結城を両手でトンと抑えて、顔を背けて避けたあの時。
――これは、不安から来る現実逃避だよ。覚悟を決めたと言ってたよね? だけど逃げるの?
結城の顔が悲しみに歪んだ。
――結城にとってあたしは、身体以外に悲しみを慰められない存在? 結城と共に闘うことも出来ない、身体だけの存在?
ごめん、結城。
言葉をきつくしてる。
――同情のセックスがしたい?
結城を思うなら、あたしは結城の望みに答えては駄目だ。
結城の悲しみの海にふたりで溺れるのではなく、あたしは彼を引っ張り上げないと駄目だ。
――馬鹿だな、お前。なんで泣くよ?
結城が笑って、知らぬ間にあたしの目から流れた涙を指で拭った。
――冗談だ。俺だって、同情されたくねぇわ、男なんだから。……言わせてしまってごめんな。やっぱ俺寝て、気分鎮めるから。子守歌歌って?
――こ、子守歌!?
――失恋の歌詞だけはやめろよ? 片思いが報われる歌にしろ。
――はああああ!?
――俺さ、いろんな意味でお前が好きなんだよ。女としてだけで、お前に傍に居て欲しいんじゃないことだけ、わかってくれ。
――……うん。
――今は、泣くほど頑張って止めてくれた"友達"のお前に癒やされて、眠るから。歌え。友情の歌はやめろよ、片思いが実る歌だ。
――やだよ、あたし音痴なんだから!
――却下。歌え、こら歌うんだ!!
――ちょ、擽らないで、結城~!!
――うるさい! 陽菜に迫ったのが失敗に終わったのなら、さっさと早く寝ろ、筋肉馬鹿! 大体ひとがいるのに、しようなんて馬鹿なんじゃない!?
――やべ……。真下起きてたのかよ。
結城とは、こういう笑い合える関係があたしは一番落ち着くの。
変に意識して、いつ終わるかわからない恋愛をするよりも、辛いときは傍で励ますことが出来る、絶対終わらない友情を築いている方が、安心できる。
そんなんじゃ駄目なのかな。
結城の危機には一番に駆けつける、大切でたまらないそんな友達でいるのは――。

