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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon

「黙れ。潰れねぇよ、俺達が守るから」
「うふふ、結城さん。そぉんなに怖い顔をしたら、明るくて優しいイケメンが台無し。ああ、それから私、今は父方の姓を名乗り、苗字が変わりました。向島千絵と言います。向島財閥デビューしちゃいました~。もうお金使い放題。働く意味なくなりました」
バーゲンで、高いものをいかに安く買うか、或いは安くてもどれだけ価値のあるものを見つけるか、それが千絵ちゃんだった。
アクセサリーもバッグも、ブランドものは身につけず、彼女が厳選した可愛いものばかりを身につけていた。
それが今や、着ている白いワンピースはどう見ても高級そう。持っているバッグは、有名ブランドのロゴが散りばめられている。腕時計もアクセサリーも、あたしの知る千絵ちゃんのものではない。
「その格好、似合わないよ」
あたしは哀れむようにして言った。
「それ本当に欲しかったものなの?」
千絵ちゃんの笑顔がなくなり、一瞬……虚ろな面が見えた。だけどその直後、貼り付いた笑みを顔に浮かべている。
「欲しかったですよ? このワンピもバッグも限定品のものなんですって。凄いでしょう」
「悪いけど、私は興味ないわ、そんなくだらない虚飾。自慢しにきたのなら帰ってくれる? 情報が流れているのなら、千絵ちゃんもわかっているでしょう? こんな無駄話をしている余裕はないの。社長に迷惑よ」
千絵ちゃんの顔が歪んだが、また笑顔に戻る。
「お土産をもってきました。お世話になった社長に」
千絵ちゃんは、ひょこりと顔を傾けて社長ににこやかに言った。
社長はベッドこと少し上体を起こしたまま、千絵ちゃんを見つめている。
「このままだと負債を抱えて忍月から見放され捨てられます。このまま孤独な借金返済地獄を始めるくらいなら、向島のものになりませんか?」
「なっ!!」
声を上げたのは何人か。
「向島が社員の皆さんの面倒を見てくれます。ただ、名前はなくなりますけど。別に会社の名前なんてどうでもいいじゃないですか。だったら」
「嫌よ!」
衣里があたしより早く言い切った。

