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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 


 課長が笑って言った。


「提案してくれたんですよ。向島に吸収されるのが嫌なら、顧客数を驚異的に伸ばして、親会社の忍月の力を盾にしろと。二週間とされたのは、多分二週間後に向島がなにか動く予定なんでしょう。だからそれまでに力を蓄えろと」


「「「は!?」」」


 同じ千絵ちゃんの言葉を聞いていて、なんで解釈が違うんだ!?

 同期三人組が驚愕の声を上げると、杏奈がすっと出てきて言った。


「それから。香月ちゃんを守れって、言ってたよ、千絵ちゃん」

「え?」

 専務は苦笑した。

「朱羽を向島は欲しがってたから、だから会社ごと抱き込みにかかったようだ。ああいう風に言われたら、お前達だって……」


「絶対、俺課長を渡さないっす!! なんでやらないといけないっすか!」

 木島くんを始めとして、皆が同調した憤然とした声を上げ、課長を渡すものかと声を揃えて団結している。

 課長が欲しいと千絵ちゃんは前にも言っていた。

 千絵ちゃんは課長を好きだったはずだ。

 それも警告のつもりだったの?

「鹿沼ちゃん。千絵ちゃんは……、やっぱり杏奈の知る優しい千絵ちゃなんだよ。なにか事情があっただけだと、杏奈はそう思う。会社をここまでにして、許されないのは……わかっているけど」

 杏奈は潤んだ目をして笑った。


「「目指せ、二週間契約100社以上!!」」

 皆のえいえいおーが聞こえてくる。


 図らずともあたし達は、千絵ちゃんによって打開策の知恵を授けられ、さらにはより一層、会社も課長も渡すまいと一丸になったのだった。

 社長の体調不良に動じることなく――。




 ***



「鹿沼、お前出張出来るか」

 社長にあたしだけ呼ばれて、そう言われた。

 皆は作戦会議らしい。ここの病室は「作戦本部」と名付けられたようだ。

「はい。契約成立のためなら、日本全国どこへでも行きます。海外は課長にして下さい」

 社長は笑った。

「N県だ」

「N県……」


 どきっとした。


「睦月の故郷でもあるがお前もだろう?」
 
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