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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon

「あ、あの社長。結城は本当にN県出身なんですか?」
「ああ。新幹線で俺、行ったり来たりしてたからな。どうした?」
「い、いえ……。社長が、あたしがN県出身だとご存知だったのは、結城から聞いて?」
あたしは結城に出身地のことを話した覚えはないのだ。
「………。お前の履歴書だよ」
「そ、そうですか。そうですよね、はは」
「鹿沼」
「はい?」
「俺が言うそいつを落とせば、日本各地の子会社がそれに追従する。もしかするとその取引先にも影響力があるかもしれない」
「それほどの……。あたしの記憶では、そんな会社は思い当たらないんですが……」
「……N県は昔に比べて、かなり拓けたところだぞ。今じゃビルが建ち並ぶし、近代的な建物だらけだ。東京に似てきて」
「そうなんですか!?」
「お前いつから地元に帰ってないよ?」
「高校を出てからです」
「親御さんは?」
「いえ、全然……」
「親に連絡入れないで、親はなにも言わないのか!?」
社長は心底驚いたというように目を丸くする。
「連絡が来ませんから、向こうもなんともないんでしょう」
「凄い放任主義だなあ、おい。俺だったら睦月に許さないぞ?」
「ふふ、一緒の会社に居るくらいなんだから、うちよりも仲良しですよね」
ひとしきりふたりで笑った後、社長が言った。
「じゃあ、火曜日あたり一緒に行ってこい。月曜日に電話入れておく。電話くらいなら、俺も出来るから」
「はい。ええと、一緒にというと……」
「お前がいちゃいちゃしてた、上司だ。先方は、うちの実力がどの程度か試すはずだ。そのとき香月が居た方がいい。新幹線で行ってこい。またあんないちゃいちゃすんなよ、社命がかかっているんだぞ」
「了解しました。が、社長。あたしいちゃいちゃなんてしてませんから!」
「嘘つけ。お前らがあまりにもいちゃいちゃしてたから、どうしようもなくて俺目が覚めたんじゃないかよ」
「だから違いますって。あたしは課長の勘違いを正していただけです! 課長に聞いて下さいよ、いちゃいちゃなんて……」
社長がにやにやしている。

