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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
 

 衣里も課長から彼女と同じ匂いを嗅ぎ取ったのか、衣里の表情は明らかな警戒を顔に出して牽制の笑顔となった。

「こちらこそよろしくお願いします。随分とお若いんですね」

「はい、新卒で別のところに就職しましたが、こちらにお世話になることに。鹿沼主任に助けられてます」

 で、なんであたしを見る!?

 ここであたしに否定して貰いたいの、賛同して貰いたいの?

 あたしの戸惑いを横目で見た衣里が、助け船を出してくれた。 

「ああ、鹿沼はいい奴ですけど、断れないのが玉に瑕。それによって無理しすぎて体調崩しやすいので、あまり飛ばしてこき使わないで下さいね。一応まだ、"女の子"ですので」

 あたしが彼と残業するということも、結城から聞いたのだろうか。それとも察したのだろうか。どちらにしても、その残業をあたしは嫌がっていることをわかった上で、言ってくれているのだろう。

「残業はほどほどにして、転職したてはストレスたまりやすいと思いますので、早く帰って彼女さんとまったりして下さい」

「それが残念ながら、あなたと同じく独り身で」

 意外や意外。チサはどうしたのだろう。

「あらま、おほほほほ。なぜ私が独り身だと知ったか知りませんけれど、それはおつらいですわ。だったら私達おつきあいしてみます?」

「あはははは、ご冗談を。私にもタイプがありますし、知り合ってすぐどうこういうような軽さはないので」


 だから、なんであたしを見る!?

 今、衣里と話しているんでしょう?

 というか、この課長…あたしには無愛想だけれど、衣里には饒舌なんだ。まあ好意の欠片も感じ取れないけれど。

 
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