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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
 

「実は私もタイプがあるので。それに女は、モテて当然と振る舞う男は大嫌いな人が多いので。それはここの鹿沼もそうですけれど」

 すると眼鏡越し、切れ長の目が侮蔑の光を浮かべた。


「男からモテて当然の女性なら、例外かもしれませんよ」


 こっち見ないでってば! 

 モテるのは、衣里! 見ればわかるでしょうが、衣里が月! あたしがすっぽん!


「あなたの恋人は、モテる男なんじゃないですか?」


 あたしを見ている。

 完全にあたしに聞いている。


「あたしは……」

「ああ、鹿沼の彼氏はモテている自覚がまったくない、とびきりのいい奴なんです。ね、そうだよね!?」

 合せろ、合せるんだ、そんな衣里の眼差しにたじろぎ、思わずコクリとだけ頷いた。


「ふうん……?」


 課長の目に冷たい光が大きくなった時、ざわめきが大きくなる。

 入ってきた杏奈と木島くんに対し、皆がなにかを言っているらしい。


「あ、じゃあ私これで失礼します」


 衣里がお辞儀をして戻る際、あたしの耳に囁いた。


「あんた、あの課長になにしたの?」

「な、なにも……」

 いえないよ、中学生の時童貞奪ったなんて。

「ずっとあんな感じなの? 昨日残業した時も?」

 ごめんなさい、衣里さん。あたしが欲情しちゃいました。

「衣里の方が喋るわ。あたしなんか無愛想だし、眼中外」

「……そうかな。私はそう感じなかった。私と話していても、あの課長必ず陽菜のことを持ち出して、陽菜を見ていた。……私営業だから、相手がなにに興味を持っているのかって、見抜くの早いの」


 衣里は目を細めて言った。


「意識しまくりよ、陽菜のこと」 

 
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