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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 

「ピンポーン、鹿沼ちゃん正解。杏奈、すっぴんできちゃったから、やっぱりわからなかったか。皆も腰抜かすほど、杏奈のすっぴん凄いみたい。まあいいや」

 いやいや、すっぴんは関係ないよ。

 いつものロリ姿より違和感がある。人間、奇抜な姿に慣れてしまえば、極上の素の姿は受け入れられなくなるものなのか。

 しかもこれですっぴん!

 大きなおめめとくるりとカールした睫。
 通った鼻筋に、小さめのピンク色の唇。

 なにより白い肌がもちもちに見える。

 嘘だ。これがあたしより年上のはずはない。

 あたしも腰抜かしていいですか?

 
「本気に杏奈!?」

「そうだよ」

「そんなに美人さんなのに、どうしてあの格好!?」

「好きだから」

 即答だ。

「でも時間かかるから、髪も巻かないで、今日はラフな姿で来たんだ~」

 ラフというか、まるきり別人でしょう。

 今までいかに格好ばかりに目をやって、けばい化粧をしていた杏奈の顔をよく見ていなかったか。杏奈の素顔は、芸能界入りができるほど極上だ。

 悔しいくらいに、課長とお似合いの美男美女。

「それと鹿沼ちゃん。別に杏奈、香月ちゃんをどうこうしてないから。プログラムを見て貰ってるの。……もう、香月ちゃん好き好きなのはわかったから、杏奈に目の毒だよ~」

「は?」

 好き好き?

 誰が? 誰を?

 軽い咳払いが聞こえた。

「……鹿沼さん。誤解が解けたのなら、離して貰っていいですか?」

 少し顔を赤く染めた課長が言った。

 途端ふわりといい匂いが漂う。

 あたしの両手の中に課長がいる。
 ……あたしが抱きしめている。杏奈の前で、課長を渡すものかと。

「――えっ? は? ご、ごめんなさ……」

「付き合っているんだから、ごめんなさいじゃないよ、鹿沼ちゃん。香月ちゃんも自分から振り解こうとしないの、うっきゃーっていう感じ。まあ、今日はお仕事日じゃないし? 杏奈黙ってるから、杏奈が胸焼けしない程度に、お願いしまーす」

「はい、よろしくお願いします」

 ちょっと! なに肯定しちゃってるのよ、課長さん。

 
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