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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon

***
月曜日――。
社長のOKが出て、翌日の午前十時十四分に東京駅を出発する新幹線で、N県の「やじまホテル」に赴くことになった。
帰りは六時くらいまでの新幹線で東京に戻ったら、そのまま社長の入院している病室に行き、社長に直接打ち合わせ結果を報告しようと、課長と話している。
そして火曜日、皆に応援されて課長と共に東京駅に向かった。
「今日はあいにくのお天気ですね」
指定席を取り、あたしの横の窓を見ながら、あたしは課長に声をかけた。
「雨に降られないうちに帰れればいいですが」
課長が腕組しながら言った。
窓と課長に挟まれて、なんだか居たたまれないような気がするあたしだが、課長が窓側の席はあたしが座るように強く勧めたため、あたしが座った。
いつも隣の席とはいえ、机に隠されていたからその距離感はあまり意識したことはなかったが、こうして足が触れあいそうな距離を目で見てしまうと、なんだか緊張してきてしまう。
しかも通路側ではないから、足の逃げ場がない。
「その靴、またはいてきてくれたんですね……」
課長が静かに笑った先はあたしの足元……課長がプレゼントしてくれた靴がある。
「はい。気合い入れようと」
朝迷いに迷ったけど、履いてきた。
……課長の家に行ける状況でないことは、お互いわかっているはずだから。
「日曜日は連れ帰れず、昨日は履いてきてくれなかった。出張の今日、履いてくれたのなら、あなたと泊まりがけにすればよかったな」
「……っ」
「……。今からでも間に合う。宿をとらないか?」
お互い顔を合わさず、課長はどこまでも冗談のように。
「……ごめんなさい。仕事ですので、日帰り出張にしたいです」
「そうだよな……。こちらこそ、変なこと言ってごめん。……忘れて」
……新幹線が発車した。

