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いじっぱりなシークレットムーン
第1章 Cheery Moon
秘匿した関係は、窓から覗く月だけが知っている。
そう、関係はこの数時間、満月の今夜だけ。
この夜だけ、あたしの底知れぬ欲を満たしてくれさえすればいい、そういう仮初めの約束だった。
"発作"で道路に崩れ落ちた時、たまたま傍で介抱してくれたのが、その時に初めて会った彼だった。あたしと同じくらいの歳だろう。20歳前後。
満月の夜、たとえ月が見えていなくても、発作が起きる夜は後腐れ無い、割り切ったセックスが出来る男をいつも選んでいたあたしには、女慣れしていそうな柔らかさを持つ彼の外見と行動は、願ったり叶ったりで。
――人助けだと思って、今夜あたしを抱いて。お願いだから!
――俺、初めて、なんだけど……。それに好きなひとがいる…。両想いになってから、そういうことをしたい。
意外に古風で一途さを披露する彼を、なんとか説得しなければならないほど、あたしの体はもう切羽詰まりすぎていた。
満月の夜にこうなることを知っているのに、おとといやめたはずのコンビニ店長の泣きそうな頼みで、急遽病欠した人の代わりで、二時間だけとバイトを入れてしまった。
そんな日に限り、いつもより早く"発作"が来て、家はもうすぐなのに帰れない。
彼が駄目ならもう、近くのホームレスの溜まり場となっている公園に飛び込んでもいいほど、強く疼き続けるあたしの心身は追いつめられていた。
名前を聞かれて、あたし咄嗟に妹の名前を名乗った。
――"チサ"。キミが好きな女だと思って、いずれ抱く練習台でいいから。
――チサ…。チサって言うんだ。……だったら。
今思えば、名乗った名前は彼の好きな女と同じ名前で、それが彼の決意を促した要素だと思う。
童貞のくせにうまかった。最初こそ狼狽はあったものの、とにかく上達が早くて、あっと言う間にあたしの体に馴染み、あたしを翻弄するまでに成長したのだ。
幾度抱き合ったのか。
破られた避妊具の包みが、点々と床に放られているのが見える。