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いじっぱりなシークレットムーン
第1章 Cheery Moon
空の色と共に、あたしの性欲という闇も薄れてきて、今までのセックス依存症のような苦しみから段々と解放され、ピロートークも出来る余裕が回復してきた。
今回治りが早いのは、そこまで彼に我武者羅に抱かれたからか。
綺麗な顔をして、抱き方は獰猛な男のようだった。そうさせたのは、あたしということが、妙に誇らしい気分にもなってくる。
――いつか、今は抱けない"チサ"を抱きたいから。
きっとそれは、同じ名前の彼女に対する愛情ゆえだ。あたしは、その神聖な愛情に立入る気もなく。
――これで俺、彼女の心ごと抱ける強さがついた気がする。
彼女は、病気なのか。今まで手を出してなかったのは、なにか事情があるのか。
女を知った彼は、妖艶さを纏い、悠然と自信に満ちた男の顔で笑うようになった。だからあたしは言う。
「今のキミなら、どんな女でも夢中になるよ」
「本当? だったら、俺……、明日頑張って告白してみようかな、ずっと好きだったって」
快楽の余韻なのか、まだ熱の引かない瞳であたしの反応を待っている。
「――頑張って。きっと大丈夫よ」
きっとそれこそが、"チサ"なのだろう。
彼が誰に告白しようが関係ない。あたしが彼に感じていたのは、体の魅力だけ。だからあたしは、軽い気持ちで応援した。
あたしは、彼とはもう会わないつもりだった。
……ここまでの逸材、多少は名残惜しい気はするけれど、セックスだけが目的の"行きずり"からまる恋愛なんか不毛な結末しか迎えないこと、あたしもわかっているし。
二年付き合った彼氏は高校時代にいたけれど、この"発作"をビッチ扱いされて酷い罵倒を受けた。あたしですら、なんで急にこうなったのかわからないというのに。
よほど怒ったのだろう、彼氏はそれを高校で言いふらし、卒業までの半年あたしは散々だった。それで大学は、地元から出て東京にしたのだ。もう地元に戻る気はない。
恋愛が終わるのをもう見たくないんだ――。
あたしが純愛というものができない分、彼の純愛を応援したい微笑ましい気持ちにもなる。
満たしてくれたことに対しての感謝と、肌を重ねた親近感ゆえに。
互いが楽しめればそれでいい。
そう、これはいつもの如く、ひとときで終わる快楽の夢――。
……その予定だった。