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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
 

 ***



――意識しまくりよ、陽菜のこと。


 衣里さん、あなたには言えなかったけれど、それはそうだと思います。

 あなたは色恋沙汰にしようとしていたかもしれないけれど、こちらは旧知の仲、しかもセックスをしてしまった仲。

 あたしが望むように、何事もなかったようにすることは難しいのかもしれません。彼は怒ってるし、いい思い出になってないみたいだし!

 チサに片思いしている純情な中学生を逆ナンして、箱で買った避妊具ほぼ使い切るほど、動物じみたセックスさせた後、一万円置いてどろんした女です。しかも本当の名前も名乗ってません。

 あ! あたし、あの時ホテル代払ってない!
 もしや、彼が支払ったの!?

 ……ビジネスホテルだから、一人一泊5,000円はかかっているよね。だとしたらあたしがおいた一万円、一応感謝と謝罪のつもりだったあの一万円、彼にとってみれば「これで支払えよ」、もしくは「カンパしてあげるから」。

 あたしは頭を抱えて、机に突っ伏した。


「あたし、本当に何様よ……」


 やばい。これはやはり謝らないといけないパターンか!?

 恥丸出しで、9年前をぶり返すか!?


 ああ、9年前のあたしを殴りたい。


 ガンガンガン。

 机に頭をぶつけていたら、慌てた声がした。


「主任は主任っす! なにしてるっす!? 自殺は駄目っす!」


 木島くんが慌てたようにして、あたしの肩を掴んだ。

 さすが元ラグビー部、ぴくりとも動けない。


「木島くん、ラグビー部のポジションは?」

「は? マネージャーっす」


 そんな体格して、ラガーマンじゃないのかよ!!


「……。一緒に筋トレとかしたりしたの?」

「いいえ。笛吹いたり、数を数えてました。主な仕事は記録つけるのと、洗濯っす!」


 その立派なガタイは、飾り物だったらしい。

 
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