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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 

「……くしゅん」

 思わずくしゃみが出てしまったあたしに、課長が自分のコートをあたしの足元にかけてくれた。

「まだ寒いなら、私の背広……」

「大丈夫です。暖かいです」

 あたしは笑いながら、課長の匂いが香るそのコートを両手で少し持ち上げるようにしてかけながら、コートの下から伸ばした手で課長の手を取り、ぎゅっと握った。

「……鹿沼さん?」

 せいいっぱいのあたしの勇気。

 こんなことするの初めてだから、ドキドキしすぎて手が震えた。


 どうか打ち合わせがうまくいきますように。

 どうか課長が理解してくれますように。


「……勇気を下さい」

 
 課長とブルームーンを過ごしたいの。

 どうか、本当のあたしを知っても嫌わないで。


 そんなあたしの思いに反応したように、課長が手の位置を変えて指を絡めてきた。それだけで、愛撫されているように身体が甘く痺れる。


「……俺があげられるものなら、すべてあげる」


 上司モードをやめ、甘く囁くように。


「あなたの傍に居るから、だから安心して」

「……はい」


 帰りの新幹線、あなたは隣に居てくれますか?


 涙が出そうになるのを誤魔化すために、目を瞑って寝たふりをした。


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