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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 


 N県――。

 悲しくなるほど、降り立った故郷になんの感慨もない。これなら初めてこの地を訪れた旅行客の方が、ビルや店で覆われた東京のような駅構内に目を輝かすだろう。

 なにも思わないのは、あたしが東京に住んでいるからなのか。それとも愛情をなくした土地は、あたしにとってどうでもいい土地になりはてているのか。

 改札を出て構内の地図を見た。

 事前に調べた通り、あたしが課長と行くのは北口方面で間違いないようだ。温泉街にはバスも出ているらしいが、本数がないためにやはりタクシーで行くことになった。

 駅があまりに大きく開発されているため、あたしの実家がどの位置にあるのかよくわからない。駅からは離れているため、この地図では描かれていないようだ。

 地図の横に路線バスの時刻表が貼ってある。ひと通りどこ行きか見てみたが、ぴんとくるものがなく。学生時代、ここから電車に乗って隣町の精神科まで通っていたというのに、どうやってここまで来ていたのかよく思い出せないのだ。

 路線バスだとは思うが、思い出せない。

「ねぇ、課長。九年東京に住んでいれば、どのバスを使って実家に帰るのか、わからなくなるものでしょうか」

 様変わりしすぎているせいか、それともあたしの記憶が薄いせいか、生まれ育ったはずの実家までどう行くのかよくわからない。

「え? あなたはN県出身なんですか?」

「あれ、社長や結城から聞いてませんでした? あたしこのN県出身で、結城も社長もN県に馴染み深いみたいなんですが、結城、卒業高校があたしの卒業した高校だと言うんですよ。あたし全然結城のこと知らないし、結城だって大学で出会ってからそんなこと言ったことなかったのに」

「同じ……同級生ということですか?」

「そうなりますけど、あたし全く記憶ないし。それを問い質せば言葉を濁すんですよ、あいつ。まずありえない話ですけれど」

「………」

「それはいいとして、こうやって地図で地名見ても、あたしの記憶にひっかかるところがないんですよ。確かに昔は田舎で、今は変わりすぎているから、地名とかも変更があっていいとは思うんですが、不思議だなあと。初めてここに来た気分です」
 
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