この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon

しばらくして従業員が帰ってくる。
「お待たせしました、社長室へご案内致します。浴室の奥なので、ちょっと歩くことになりますが……」
「構いません。よろしくお願いします」
従業員を先頭に、左の通路を通って、ワイン色の絨毯を踏みつけて課長と歩いていく。天井には、宿泊棟と思われるすみれとかゆりとか花の名前と、大浴場と案内板が光っている。
「右側は日帰りのお客様の休憩室などが広がっています。ただ大浴場はどちらも共通となりますけれど」
左側一面に広がる大きな硝子窓からは壮大な日本庭園が見え、趣がある風景が広がる。
「素晴らしいホテルですね。ため息がでちゃいます」
あたしが声を漏らすと、従業員は振り向いてにこりと笑った。
「ありがとうございます。お客様は、当ホテルのご利用はありますか? やじまチェーンは全国に広がっておりますが」
「それがないんです。高級ホテルということに宿泊したことがなくて。庶民には憧れなんで、なにかの記念日にでも利用させて頂こうと思います」
「はい、その時は是非。お客様はどちらから?」
「東京です」
「東京……というと、一番近いのは、神奈川県の逗子近くの葉山にも、一件温泉宿がございます」
「え、そんなところに温泉があるんですか!」
「ふふ、ございます。閑静なところに建ち、そこには別邸として一棟貸し切ることも出来ます。隠れ宿として、著名な方々がお忍びでご利用される客が多いと聞いています。勿論別邸はお値段が張りますが」
「はああ……。いいなあ、そういうところ行ってみたいです」
「お肌つるつるになりますよ、やじまの温泉は。源泉使用しているので。もちろんここの温泉も、女性に大人気です」
「今度、仕事がない時にプライベートで来ます。ご親切に色々教えて下さり、ありがとうございます」
課長を見上げると、課長はなにか考え込んでいるようだ。

