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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
「……今度、シャツの洗濯お願いしようかしら」
「いいっすよ! 手洗いばっちり、俺毎日家で洗濯してますから!」
いい主夫になれそうだ。
「だから早まるのはよして下さい!」
本気であたしがどうかしちゃったと思っているらしい。分厚めの唇からしゅうしゅう息を吐き、目は真剣だ。いつも眠そうなとろんとした目をしているけれど、こんな真剣な顔もできるんだと知ってびっくり。
上半身を抱きしめられた形のままで、聞いてみた。
「毎日洗濯する人が、なんで今日は昨日と同じ服なのかな?」
「ぎくっ」
木島くんはよほど動揺しているのか、本来聞こえないはずの擬音語を、口に出した。
「しかもいつも別々の時間帯で出勤している杏奈と一緒に出社、しかも木島くんだけではなく杏奈も昨日と同じ服! あたしおしゃべりしていて、木島くんが皆になんて答えたのか聞いてなかったの。なんて答えたの?」
「い、いや……その……」
「なんで今日、木島くん腰をぽんぽん手で叩いていたの? 腰どうかしちゃった?」
にたり。
「杏奈はお肌つやつや、だけど木島くんは目にクマ出来ていて、主に腰がだるそう。もしかしちゃって、杏奈をお嫁さんに……」
「腰は、三上さんが激しすぎたからっす!」
「わお」
「ち、違います! 邪推しないでください。俺は、俺は……」
その時、カチャリとドアが開いた。
あ、二階の会議室にいたこと忘れていた。
木島くんから例のサイトについて話があると言われて、そうしたらやはり上司に話通した方がいいなって、席外していた香月課長にB会議室まで来てくれと、デザイン課の千絵ちゃんに伝言お願いしたんだっけ。
今、その伝言通り現れた香月朱羽が、あたし達を見て目を見開いた。
そして――。
「なにをしてるっ!!」
いつもふてぶてしいまで余裕めいた態度は返上し、殺されると思ったくらいの勢いで中に入ってきたかと思うと、てこでも動かなかった偽ラガーマンの木島くんを片手で突き飛ばし、思い切り壁にぶちあてた血気盛んな課長は、あたしの双肩を掴んで言った。
「襲ったのはどっちだ!?」
「………」
あたしの頭の中で、カラスがアホーと鳴いた。