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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon

女社長は愉快そうな顔を向けてきた。
「ええ、その通り。それが?」
「内観を大事にするあまり、従業員に指示する内線も多くおけない。広い館内で従業員は、走り回って部屋以外にいる顧客を見る余裕がない。社長がフロントに立っていることに、もしかすると、気づいてすらないのかもしれない」
「それで?」
「内線を、置きましょう」
「言ったでしょう、景観が悪いの。高級ホテルを銘打っている以上、従業員が電話をとって話しているなんて、体裁も悪いわ」
「話さずともどこがヘルプを求めているのか、従業員だけがわかる形ならいいんですよね? 内線の形を電話にしなければ」
「出来るの? お宅は電話屋さんじゃないのに」
すると課長は微笑んで言った。
「私達が提案するのは、相手が本当に困っていることの改善を提案することです。システム提案も、そこから発案していたものですが、急ぐ案件でもないのなら、せっかくお会いしたご縁です。そちらの方をなんとかしましょう」
「か、課長!!」
内観を損ねないで、従業員が電話を取らずに仕事を把握できるもの。
そんなものがあるはずがない。
建物の広さの割に、従業員が少なすぎるのだ。
――それにしては、従業人が足りない。しかも内線を使うのに、どうしてフロントまで行かないと駄目なんですかね。
――案内役がいなくなったら、内線で?
最初から、課長は気にしていたのだ。内線を。
そしてあたしは気づく。資料をしまった課長が、タブレットだけ机の上に残したことを。
景観をよくできる内線――つまりは。
「このような、液晶パネルを置きませんか? そこに普段は館内の案内や周辺施設の案内を流しておく。しかし従業員が触ると、たとえば館内マップみたいのが出て、どこに来て欲しいか赤くなったり、個別のメッセージが出たりする。しかも従業員以外には、それの画面には行き着かない」
ああ、その認証方法は――。
「指紋認証ですか」
あたしの言葉に、課長は頷く。

