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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon

「メインのコンピュータに指紋を登録させ、それをすべてのタブレットに共有させます。先に登録した指紋でしか、内部のシステムは開かないからセキュリティーも大丈夫。内線の受話器が外れて……という心配もない」
「だけど課長さん。皆がそれぞれ仕事をしているの、タブレットに張り付いていられるわけではないのよ」
「従業員には無線機としてのPHSを持たせましょう。パネル操作をすれば、該当する従業員のPHSが震える」
「でもそうしたら、従業員分の電話代が……」
すると課長は笑った。
「今はネットが便利な時代です。無線回線をフル活用しましょう。ああいうように、パソコンにLANケーブルをつけて有線にするのではなく」
指さした先は、机からはみ出ているLANケーブル。
「パソコンだけではなく、タブレットも勿論無線で動かします。ネットに繋げるようにしておけば、利用客も使用できるようになります」
ああ、なんだろう。
開いた口がふさがらないとはこういうことを言うのか。
「勿論、タブレットが嫌なら、従業員にPHSではなく小さなスマホを持たせることも可能です。常に視覚的に見れる。ただそうなると、スマホという機材を買うのに、お金がかかりすぎてしまいます」
同じ景色を見てここにきたのに、課長は既にこの提案を練っていたのか。あたしはもって来ただけの資料でやりきろうとしていたのに、課長は臨機応変でなにが必要なのか、それを見抜いていたのか。
「タブレット……面白そうな提案ね。だけどうちの景観に、そんな真四角のって合わない気がしない? もっとすっとした、スタイリッシュなのはないものかしら」
でも市販されているタブレットの形はほぼ同じだ。
「主任」
その時、あたしを呼ばれた。
「斎藤製作所さんに電話して頂けますか?」
斎藤製作所……って、リサイクルを主とした、電子機器を制作しているところだ!
あたしは工場長に言われていた。
――仕事、ないですかね? できる限り、ワガママ聞きますので。
「すみません、ちょっと電話よろしいですか?」
社長に断り、あたしは立ち上がって小声で話した。
あたしが思う、ここの館内に似合うスタイリッシュな液晶画面は、菱形だ。しかもやや縦長の。それが作れなかったら、終わりだ。

