この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 


 もうなんでこのひとは、心臓に悪いんだろう。

 どうして笑う顔が、こんなに愛おしいと思えるのだろう。

 いつもすました顔をしているくせに、なんであたしだけ……。


――お互いが大切でたまらない……そうんな風に見えたから。


「……それと、ありがとうございました、課長。課長の機転のおかげで、仕事を取れました」

「私は、なにもしてませんよ。社長に気に入られたのは、あなたの人柄と努力です。私はそれに乗っかっただけ」

「違います、課長がいなかったら……」

「じゃあ、必要として下さい。ずっと」

 課長は優しく微笑んだ。

 
 ……やっばいなあ、心臓がドキドキしてくる。

 こうやって絶対自分を誇らない課長が、こうやって優しい顔を見せてくる度に、あたしは――。


 バリバリバリ。


 なにかがなにかに叩きつけるような、そんな凶悪な音を耳にして、あたしと課長は、日本庭園が見える窓の前で呆然とした。

 天気が荒れているのだ。

 凄まじい豪雨が硝子窓に叩きつけ、木々は真横に靡き、真っ暗闇の中雷が光って、どどーんと落ちた。雷が苦手なあたしは、思わず課長に抱きつくようにしがみついた。


 天気が悪いことはわかっていた。山の天気も移ろうものだということもわかっていた。だけどここまでになるとは、予想していなかった。


 ピカッ。


 これは台風が上陸した時のようだ。


 どどーん。


「ひっ」


 窓が壊さんばかりの雨。

 怖い怖い、雷さま嫌い!
 


「……新幹線、動いているかな」

「へ?」


 課長はスマホを取り出してニュースを見た。


「新幹線、やはり止まっています。電線が落ち、人身事故も起きたようで、今のところ復旧の見込みはないらしい」


 ピカッ。


「じゃ、じゃあどうやって帰るんですか! タクシーで帰れる距離じゃないですよ!? タクシーも雷怖いし!」

 課長はため息をついて、窓の外を眺めた。


 どどーん。


「ここにいましょう。今夜は帰るのは無理だ」

「え?」


 ピカッ。


 顔を傾けてあたしを見たその顔が、雷光に輝く。


「ここに泊まりましょう」


 どどーん。

 あたしの心の中でも轟音が鳴った。

 
/1291ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ