この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon

「――そう、どうしても帰れないのよ、結城。ニュースやってるでしょ? お土産買っていくから、だから……ちゃんとお部屋はふたつだから、そこじゃなくて、あたしが無事に東京に帰れるかどうかを心配してよ! いいって、迎えにこなくても、こんな天気の時に事故るだけだから! あんたは皆と営業頑張って。夜も接待あるって言ってたじゃない。こっちは明日には帰れると思うから。ね!?」
それでなくとも打ち合わせ先なのだ。普通どう考えたって、ふた部屋でしょう? 第一、ふた部屋と進んで手配して貰ったのは課長だし! 別にあたしは寂しいなあとか、今まで二回も一緒にお泊まりしてるじゃん、とか思っていないし!
その時差し出された課長のスマホ。彼は彼なりに色々と電話をしていたらしく、電話が繋がっている相手は社長だった。
『よぉ~、カワウソ~。なんだ、お前泳ぐの得意だろ? 水くらい掻き分けて、香月を乗せて帰ってくると思ってたのに』
「社長、あたしはれっきとした人間です。お元気そうでなにより」
『そりゃあ、お前達があの矢島社長に気に入られたなら、元気にならないわけがないだろうよ。女だと思ってなかっただろう。よくやったな』
褒められるとじーんと胸が熱くなる。
「……社長、課長がすべてやってくれました。あたしはなにも出来なくて」
『さっき矢島社長からお礼の電話あったぞ。お前をえらく気に入って、引き抜きたいと言ってきたから、一応断った』
「一応ってなんですか! あたしはシークレットムーン以外には行きませんからね」
『はははは。……なぁ、鹿沼』
「はい?」
『ありがとうな』
「………」
『お前も香月も、睦月も衣里も居て。しかも木島や三上を中心として、新卒で採用した下までみんなやる気になっている。……社員に恵まれたわ』

