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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon

だだっ広い畳の中央にある漆のような素材で出来たワイン色の座卓に、向かい合わせにふたつ置かれた、ワイン色の座布団が敷かれた座椅子に座るように、社長に指示されて座る。
机の上に用意されているお茶のセット。そこに社長が優雅な手つきで美味しいお茶を入れてくれて、N県名物だという茶菓子も添えてくれた。
『旅のおてもと』……そう書かれた長細い包みに入ったお菓子を、初めて見た。創業52年と書いてあるが、あたしは知らないものだった。
社長が部屋の説明をしてくれるが、そのお菓子が気になってあまりよく聞いておらず、最後に我に返った。そして改めて疑問に思い、気になってくる。
「――ということで、今のでお部屋の説明になります。ご質問はございますか?」
そう、お茶碗から座椅子から、この部屋ですべてがふたり分でセットしてあることの意味を。
「あ、あの……社長。ひとついいですか? あたしのお部屋は、案内して頂けるんですよね? お隣ですか?」
「あら、ここよ」
邪気のない顔で微笑まれた。
「ここでお隣同士、ゆっくりなさってね」
「え!? ふた間じゃなくふた部屋でお話していたんですが、課長も!」
「まあ、それは残念だわ。ただいま満室なの。だからおふたりでも大丈夫なこちらを使って貰ったんだけれど」
「……ま、満室?」
「ええ、満室。ここ以外はお部屋がないの。そうさっき課長さんにお話したの。ね?」
課長はまた赤くなって言葉を濁す。

