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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 
 同室だとあの時に聞いたかもしれないけど、絶対他にも色々言われたんだ。そうじゃないと、眼鏡のレンズがキランと光るはずだ。

 え、なに。

 課長の同意の上で、同室?

 同じお部屋でお泊まりですか?

「ふふふ、お仕事では頼もしいのに、普段は可愛い課長さんね」

 また課長に耳打ちすると、課長の顔が再び真っ赤になった。

 ……むかっ。

 なんで課長、赤くなるの?

 なんでそんな顔を、矢島社長に見せちゃうの? 

 ふぅん? そうきたか。

「ではごゆっくり~」

 出て行く女社長をムカムカとした思いを隠して見送りながら、広い部屋の中であたしは途方に暮れた声を出す。

「課長、なんで同室に反対しなかったんですか? 最初分けてくれって言ってたのは課長じゃないですか」

「満室なら仕方がないでしょう。すみませんが、ちょっと仕事をさせて頂きます。どうぞあなたはあなたのしたいことをしてて下さい」

 社長に向かってはあんなに赤くなっていたのに、なぜかあたしには素っ気ない。顔を合せようともしないで、パソコンをカタカタ始める。

 打ち合わせのこととかでもいい。お話する気がまったくないみたい。

 なんですか、矢島社長の耳打ちにやられちゃいましたか。

 矢島社長、泣きボクロからして、お色気が充ち満ちてますものね。

 もしかして、夜に逢い引きのお約束でもしちゃいましたか。

 ……へぇ、だから真っ赤になったんだ?

「課長」

「はい?」

「それ急ぎなんですか?」

「はい、そうです」

「ふぅん?」

 画面を一瞥してあたしは立ち上がる。

「課長、ひらがな打ちでしたっけ? 同じ日本人として、なにを書いているのかまったくわかりませんけど」

「――!!!」

「すみませんでしたね、こんな色気ないのと同室で。どこに行こうともあたしはなにも言いませんし、ご迷惑おかけしませんので、どうぞ思う存分カタカタしてて下さい」

「ちょ、鹿沼「お風呂に行ってきます」」

「待てったら!」


 課長があたしの腕を掴んだ。

「あなたと同室が嫌っていうわけではないんだ」

「……」

「今日は仕事で来たんだし、今日は約束の日でもないし、だから出来れば俺の理性を考えて、別室にと頼んだけど、矢島社長が……」

 また課長は赤い顔になって項垂れる。

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