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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 


 舌が絡む前に課長の顔が離れた。

 濡れ髪を揺らして、課長は妖艶に微笑む。


「俺は、子供には欲情しないよ」

「――っ!!」


 そして、課長の唇があたしの顔中に注がれた。


「可愛くて、たまらない。俺だけが見ていたい」


 ひとつひとつ優しく、熱く。それだけで課長の匂いに混じり、頭がぼんやりしてくる。 

「前に言ったよね、可愛いって。化粧なんかしないで、そのままのあなたを見せてよ」

 課長にそうやって甘く囁かれると、本当にすっぴんでいてもいいような気がする。

 課長になら、素のあたしを見られても――。

「こんな可愛いあなたを見ていて、俺、おとなしくしないよ?」

 課長の舌があたしの開いた唇に差し込まれ、そのまま横に移動して、唇の裏側を舐められた。


 もどかしい。

 奥に来てくれないのが。


「俺、あんな男が真っ先にあなたを見つけて、腕を掴んでいたことに苛立ってるんだよ。待ってたのに、あなたが出てくるの、俺は待っていたのに。あなたは俺を牽制したのに、他の男ならいいのかと思って」

「……違っ、あたし……」

「あなたがその気がなくても、男はみんなあなたに惑う。それを自覚して」


 今まであたしが合せなかった視線が、まっすぐに合う。

「……」

「……」

 熱くて熱くて溶けてしまいそうなほどの視線。

 この距離がもどかしい。

 ねぇ、あたしを攻めたのならちゃんと攻めてよ。

 あたしのコンプレックスを慰めてくれるのなら、ちゃんと責任とってよ。

 身体が、熱いの。


 ……課長の瞳が揺れた。


「……課長……」

「……っ」

 課長の口から、悩ましい……喘ぎ息のような声が漏れて、さらに身体が熱くなって蕩けそうになってくる。


「……いけないひとだね。そんなに俺を暴走させたいの? ……ここがどこでも、止まらないよ?」

 ちゅっちゅっと唇にキスを落としてから、ぬるりと舌が入り込んできた。

 ああ、この重苦しいこの感覚!

 ぞくぞくして思わず課長の首筋に手を巻き付かせると、課長はあたしの後頭部を撫でながら、あたしの口の奥深くに忍び込んできて、激しく舌を絡み合わせてきた。
 
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