この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon

「人がいないところ行きたい……」
「やめてとは言わないんだ?」
課長が艶めいた顔で笑う。
「今夜は……課長にいっぱい愛されたい……」
口からぽろりと出た言葉。
今夜が最後だと思ったら、余計課長の熱と匂いを感じたい。
あたしの身体に、課長を刻みつけて欲しい。
一度こうして課長の匂いを纏ってしまったら、離れたくない――。
「だめ?」
見上げると、課長は眉間に皺を刻み、苦しげな顔をした。
「俺を拒んで先に牽制していたくせに、そんな可愛いこと言って、俺をどうしたいんだよ?」
笑う課長は、人声を背にしてあたしをそのまま両腕で抱き上げた。
「な……」
「暴れないで。お姫様だっこと言うんだろう? この名前通り、あなたをこう抱き上げてみたかった」
「……っ」
まるで、あたしがお姫様と言うかのようで、ドキドキが止まらない。
課長のがあたしに耳打ちした。
「いいよ、愛してあげる。そんなに可愛いこと言うのなら、あなたが嫌って言ってもやめない。いつもとはなにか違うあなたに騙されたふりをして、しっかり煽られてあげる」
少し黄色い電灯が照らし出す課長は、どこまでも艶めいていて。
課長に触れたい。
課長に触れられたい。
課長の匂いと熱に、衝動がとまらない。
……たとえ課長の目に、いつもとは違う、おかしなあたしとして映っても、今のあたしは課長から離れたくないと切実だから。
課長はそのまま歩き、エレベーターに乗った。押した階数は、部屋のものではない。
「この棟の上に、展望台があるらしい。部屋はご飯の支度をされている最中だろうから、すぐにあなたを愛せない。だから、展望台に行こう?」
「か、ちょ……」
「だけどその呼び方はやめてね」
「う……ん、朱羽……」
恥ずかしいというのに、課長から離れたくない。
課長の首に手をかけ、課長の胸板に顔をつける。
ドクドクと、早い鼓動は、ねぇ……課長のものなの?
「今日は嵐だから、ひともいない。音が怖く思えないくらい、たっぷり愛してあげる。可愛いお姫様の、お望み通り」
甘く囁かれて、自然と唇が重なった。

