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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 

 なんだか恥ずかしくて胸の前に手をあてようとしたら、

「駄目。俺に愛されたいんでしょう? あなたの身体を隠すものなんかいらない」

 襟が広げられ、上半身がむき出しになる。そして彼の手が滑るようにして、中途半端に揺れるブラを手から抜き取る。

 そして――眩しいように目を細めて、あたしの身体をじっと見つめた。

 視姦されているような気分になり、思わず身じろぎすると、課長はそのまま前傾になりながら、あたしの乳房に顔を埋めた。

 彼も自分の袖から手を抜き、浴衣の上衣を脱ぐと、あたしごと身体を捻るようにして、あたしをソファに押し倒し、逞しい胸板にあたしの肌を重ねてくる。はだけた裾からも、伸びたふたりの足がもつれるように絡み合う。

 温泉に入った肌はすべすべとして、触れあうのも気持ちいい。彼の素肌に直に触れ、彼の匂いを強く嗅げば、幸福感と充足感、そして愛おしい気分が募ってきて、なんだか泣きたくなる。
 
 課長が顔だけを離し、そんなあたしを上からじっと見つめていた。

 顔を傾け、さらさらとした黒髪を零しながら、なにかを訴えかけているかのように、瞳が揺れている。

 もぞもぞと動くお互いの足が快楽へと誘うのに、彼の瞳はそれだけではない、もっと切実ななにかを訴えようとしていた。

 時折唇が震え、なにか話そうとするのだが、やるせなさそうに目を細める。

 その目が語るものはなに?

 ねぇ、課長でも言い出せないものってなに?


 課長の目をもっと近くで覗き込みたくて、両手を伸ばして眼鏡を外すと、課長はちょっと恥ずかしそうにして目を軽く伏せ、あたしに視線を戻した。


「……っ」


 透明なレンズでも、彼の眼差しの強さを抑えていたことを知り、息を吞んだ。

 彼の目は一直線で、怖いくらいに獰猛で。

 熱を帯びて、ゆらゆらと炎のように瞳が揺れている。

 ……見ていて火傷しそうなほどに。


 なにか葛藤しているのがわかった。

 だけどそれを言い出そうとしない課長は、諦めたように苦笑した。

「眼鏡とって……、幻滅しない?」

 彼が掠れた声で放った言葉は、どこか自嘲気だけれど、あたしにとっては甘いものでしかなく。

「全然。なんで?」

 
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