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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 
「……何年も前になるけど、俺の従弟が……好きな女に眼鏡をとられて、思ったのと違うと言われたらしく、落ち込んでいて。それを聞いていたから、あなたが幻滅したら嫌だなって」

「あたし、眼鏡とった顔もう見てるけど」

「……俺、熱出してただろう?」

 不可抗力だったとでも言いたそうに。

「ふふ。あたし、眼鏡姿も好きだけど、とった顔も好きだよ?」

 そう笑いながら、彼の目に唇を押しつける。

「幻滅なんてするはずがない」

 激情を秘める彼の目を、なだめるように。 


「あのさ……」


 前髪が零れる。


「もっと違うところに反応してよ」

「違うところ?」


 課長の舌が首筋から耳に這わされ、かぷかぷと耳朶を甘噛みされては、耳の穴にねじ込まれる。思わず肩を竦めるようにして声を漏らし、潤った秘部をなすりつけるように、課長の足を挟んだ足をもぞもぞと動かした。


「そう。あいつが落ち込んだのは、相手が"好きな女"だからだ。俺がなんでこの話を出したのか、なんで不安になったのか、主旨を察してよ」

 主旨……"好きな女"?

 言葉を出そうとした唇は、課長の唇に奪われて何も言えない。

 ちょっと怒ったような顔で、何度も角度を変えられては、唇を食まれる。荒々しくされる度に喜びを感じてしまうあたしは、課長を抱きしめながら、このキスに酔いしれるしか出来ない。

 銀の糸を繋げながら、唇が離れる。

 名残惜しそうに、とろりとした目をしているのはお互い様だろう。

「今は言ってあげないよ」

 唇が至近距離で止まっている。

 キスをしたいのに、動かない。


「だから俺の身体から、感じ取って。……俺があなたをどう思っているか」

 
 近づいては引かれる唇。

 欲しい、欲しい。あの唇が欲しい。

 
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