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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 

 カタカタと手の震えが止まらない。

 ぐっと固い拳にして、自分のなかの不安と恐怖と闘う。

「満月、の夜は……男に抱いて、貰って……性欲を、鎮めないと……、発狂、するほど……、苦しく……て、たまらない、の」

 胸に溜めていたものを小さく、強く……涙混じりに吐きだしていく。

 初めてあたしがわかって欲しいと思ったひとだから、真実を知っても嫌わないで欲しい。蔑まないで欲しい。消えていなくならないで欲しい。

 神様、あたしに……ありったけの勇気を――。

「満月以外の、日は……普通なのに、満月、の夜だけは……どんなに自分で縛り付けても、引き千切って……あたしは、裸で……外に、いる」

 心構えなく、衝動的に口にするには、あまりにも重すぎる話。それでもあたしは嗚咽混じりに、握った拳に力を込めて、話し続ける。

「身体に、お、お……犯された、跡があったのも、一回や二回の、話……じゃなく……てっ、これは……合意でっ」

 しかしどんなに勇気を出しても、怖くて朱羽の顔が見れない。彼の反応が怖くて。


 こんな穢れた女は願い下げだと思われる。

 気持ち悪いと思われる。


 静けさの中で、窓硝子に当たる雨がまた激しさを増した。

 今にも壊れそうな悲鳴のような音が、過去の嘲笑と混ざり合うように、頭に反響する。


「……うっ」


 涙が堪えきれず、震える唇を噛みしめているあたしに、大きな手が伸びた。びくっとするあたしの頭を撫で、そして片手をあたしの腹部に巻き付けるようにして共に身体を起こし、後ろからぎゅっと抱きしめてくる。


「うう……っ」

 
 彼の腕を掴んで咽び泣くと、震えるその手は反対の彼の手に重ねられた。

 それが嬉しくて、そして切なくて……、また涙が出てくる。
 
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