この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon

「……あの時はごめんなさい。そう、歓迎会は満月の日で、理性と性欲の狭間にいたのを、結城に連れ出して……貰ったの。そうじゃないと、皆に襲いかかったはずだから」
「そっか……」
なにを考えているの?
面倒臭い、重い女だと、呆れてる?
「……もしかして、九年前も?」
痛いところを突かれてしまう。
「あの時も、満月だったように思う」
「……そう。発作で苦しんでいる時、あなたは声をかけてくれた。あなたが拒絶したら、あたしはあの公園のホームレスに抱かれに行ったと思う」
「……元から、一夜限り、だったのか」
「……ごめん」
罪悪感に胸が痛い。
彼のハジメテを、あたしが奪ったのだから。
チサが好きな彼を、初対面のあたしが抱いてしまったのだから。
「そっか……。そんな事情があったのか。あなたに……――れていると、勝手に勘違いして、俺は……」
「え?」
「なんでもない」
ややしばらくして、彼は言った。
「でも金曜日……、結城さんといるかもしれないという意味は? 満月は歓迎会だったのに、あなたはまた結城さんに抱かれようしてる。結城さんとは、満月以外にも関係があるんじゃないか」
拗ねたような声が聞こえる。
「……この八年、結城との関係は満月限定のものよ。……金曜日、ブルームーンといって、一ヶ月に二回来る稀な満月の日なの」
「また満月が来るの?」
「うん。疑うなら、調べてよ。ネットでもそう書いてあるから。あたしはそれを知らずに二週間後と約束してしまったけど、後でブルームーンだということがわかった。だから……罵倒されてきたあたしの姿を、あなたには見せたくなくて。だけど……結城の気持ちも聞いてしまった以上、あたしは結城にも頼れないから……だからひとりで……っ」
「陽菜」
涙声になったあたし。朱羽はそこでようやく、あたしの身体を回すようにして、真っ正面からあたしを見た。
そこにあるのは――
「俺がいるだろう? ひとりじゃない」
変わらぬ優しい瞳。

