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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 


「不可抗力なんだし、嫌えるはずがない。満月のあなたも満月ではない時のあなたも、あなたなんだろう? いろんな顔を、見たい。……見せて? なにも隠さず素のあなたを。俺は、居なくならない」

「……っ」

「俺の中では、あなたと結城さんが熱愛してる恋人だったとかの方が嫌だよ」

「……え、そっちの方が嫌なの?」

「うん」

「そっちの方が、まだ現実的じゃ……」

「現実的なら余計無理。それならあなたが満月でオオカミ女になると言われた方が、素直に信じられる」

 それでも朱羽の顔は、冗談っぽい様子には見えない。至って真剣だ。

 なんだか笑ってしまう。あたし、ちゃんと笑える。

「……あなたを八年、毎月抱き続けた結城さんには、すごく妬けるけど……彼に感謝しないとな、あなたを守り続けてくれていたんだから」

 このひとだから惹かれて、このひとだから満月のことを言いたくなくて、このひとだから満月のことを自分で言いたかった。

 終わるかもしれないと思いながら、終わらないことをずっと望んでいた。

 あたしは――香月朱羽が好きだ。
 

「ひとつ、いい? 九年前……そりゃあ俺は初めてだったから、緊張して色々失態は見せたと思うけど、それでもあなたは、あなたが言うほど狂ったような感じがなかった。あなたは俺に優しかったよ」

「それは……っ」

「それは?」

「その……」

「なに?」

 言い淀むあたしを、朱羽は許してくれない。

「……朱羽はとてもうまくて、激しくて……。大きくイってばかりいたから、鎮静も早かったの」

「……」

「……」

「……どうしてそんなこと言うのかな」

 朱羽は赤い顔でむっつりとして、頭を掻いた。

「聞かれたから……」

「……。そういう風に言われると、こう言いたくなるじゃないか。結城さんはどうなのって」

「え?」

「結城さんはうまいの? あなたはすぐに鎮まるの?」

 ふて腐れたようなその顔は、真剣だ。

「そ、その……どうかな?」

 あたしの目が泳ぐ。

「12ヶ月×8年、つまり100回近く、あなたを抱いているのなら、最初が仮に下手であったとしても、成長するよね。結城さんは、初めてだったの? 俺と同じ?」

「いや、だからね?」
 
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