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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon

「ブランクあるけど、最初の俺のでもよかったのなら、それから100回したら、あなたは満月じゃなくても、狂うと思うよ? いや、狂わせる!」
「断言しなくてもいいから! 今でもう十分だから!」
「いや駄目だ。最後までしてないじゃないか。陽菜も可哀想に。1ヶ月のうち1回だけ狂ってればよかったのに、俺と居たら残り30日も狂う羽目になるなんて」
にやりと、どこか超然とした自信を纏って、彼は笑う。
「ちょっ、やめてよ、それ本気にやめてよ!?」
「あはははは」
あたしの手首を朱羽はがしっと掴む。
「陽菜」
一直線状の強い眼差しを向けて。
「話を聞いても、俺はなにひとつあなたを嫌う要素が見つからない」
「……っ」
「ブルームーン、俺と過ごそう」
「しゅ、う……」
「ブルームーンだけじゃない、その後の満月も。勿論満月以外も。……あなたの隣で、俺を眠らせて」
泣けてくる。
「本当のことを言うと、九年前のあなたは狂うまではなくてももっと貪欲だったから、今は昔のように求められないのが悔しくて、色々してしまったんだ。……ごめん」
「そんな、謝ること……」
「ただね、陽菜。あなたは満月に苦しんでいる。過去のトラウマからあなたは逃げ出したつもりでも、完全に囚われている。満月に原因があるのなら、俺はそれを解決してやりたい」
「……解決?」
そんなこと、あたしは思ったことがなかった。
「明日、朝早く出て……あなたの実家に行こう」
「え……」
「あなたの話では、あなたを苦しめたのは彼氏と友達と言っていた。だけど家族の話が出てこない」
「家族……」
「普通、親ならあなたが心配で電話のひとつくらい入れる。九年以上も放置とはありえない」
「……っ」
「行ってみよう。あなたはきっと、なにかを忘れようとしている。結城さんの言葉も、真実がわかるかもしれない」
「………」
あたしの記憶に、間違ったことがあるというのか。
間違っていたなら、結城の言うことは正しいのか。
……踏み出そう。
「なにが出てきても……朱羽は傍にいてくれる?」
今なら、踏み出せる。
「勿論」
朱羽が嫌わないで、満月のあたしを受け止めようとしてくれるのなら。
満月が導いた……その奇跡に初めて感謝して。

