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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon

「うふふふふ、お邪魔しました~」
大人ジョークというのか、エッチなことを揶揄するにいいだけ揶揄して、嵐のように社長が出て行けば、静まりかえった大広間の中で、
「げほっ…、げほげほっ」
蹲る朱羽があたしの方を頭にして、苦しそうに咳き込み続けている音だけが響き渡る。
あたしにやったり言っていることは大胆なのに、第三者に不意打ちでやられると駄目なのか。
それとも色々な経験値がありそうな年上女社長の方が、優秀すぎる頭脳を持つ朱羽より、一枚上手だったのか。
「課長、おしぼりです。大丈夫ですか?」
すると朱羽は真っ赤な顔で恨めしそうに、あたしを見上げる。
「なんで、あなたは……げほっげほっ」
「え、あたしがどうかしました? ちょ、課長……本当に大丈夫ですか?」
だからなんでそんなに恨めしそうなのよ。
咳が落ち着き、よほど苦しかったのか、しばしぜぇぜぇと肩で息をしていたが、怒ったような顔でコップに入っていたビールを一気に呷る。
そして四つん這い状態で朱羽を見ていたあたしの両脇に両手を差し込み、引き上げるようにさらにはくるりと回され、気づけば課長を背後にお膝の上を跨いでいる。
「え? え?」
後ろから抱きつかれ、朱羽の匂いに包まれた。
あたしの肩に彼の顎があるらしく、彼の熱い息と髪の毛があたしの首や頬を掠めて、身体がカッと熱くなる。
「ちょ、課長……っ」
彼の両腕があたしの腹のところに組まれ、動けない。
不意打ちの朱羽の匂いに、脳がピンク色に染まりそうだ。
「ねぇ、なに……ぅ、ん」
返事の代わりに、首に唇が押し当てられぞくりとする。
「なんであなたは動揺しないの? あんなこと言われてされて」
「いや、だってからかわれてるのわかるし……」
「余裕だよね。慣れてるんだ、こういうところに男と来て、こういうお膳立てされるの。結城さんと? それとも誰?」
むすっと、明らかに不機嫌そうな声が降る。
「ありませんから。結城とも来てないし、あたし課長じゃあるまいし、同伴できるほどモテませんから」
「……言葉、戻ってるし」
「言、葉……?」
朱羽の唇が耳に行く。
「本当にあなたは、いやらしいことをしないと、呼んでくれないのかな、俺の名前」
「っ!! だ、だって、社長が居たから」

