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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 

 ビールの匂いが微かに香る唇で、耳殻を噛まれる。

「ぁ、ぅんんっ」
 
「社長が居なくなって、俺とふたりでも直ってない」

「……っ」

「……わからせないとな。会社から離れたふたりきりのホテルで、あなたが求めているのが上司なのか、俺なのか。あなたは俺の部下なのか、ただの女なのか」

 朱羽の手が襟から中に入ってくる。

「ちょ……」

「今日は恋人の真似しようって言ったのに、しなかったからお仕置き」

「お仕置きって……ぅんん、ちょ、朱羽……っ」

 ブラの上から、蕾を指で摘ままれもどかしいままに屹立され、反対の手は裾を割って太股を撫でている。

 あたしは朱羽の腕を掴んで、頭を横に振ったが、止まらない。

「それに、なんで化粧したんだよ。俺より、あの社長の方が大切なわけ?」

「違……ぁぁああっ」

「陽菜、左を見て」

 耳を愛撫されながら、涙目で左を見ると、姿見があった。

 意地悪そうな顔をした朱羽に包まれた、艶めいた顔のあたしがいる。

「えっろい顔。あんなに濡らして喘いでいたのに、まだ足りないの?」

「……やっ」

 朱羽、Sモードだ。だけどぞくぞくする。朱羽になら虐められたい。

 鏡の中の朱羽が、男の顔をして、あたしの耳に舌を這わせては噛みつく。ぶるりと身震いしながら、はだけた襟の隙間から覗くブラが、朱羽の手で引き下げられ、露わになった乳房に彼の指が沈んだのを見た。

「んん……」


 あたしの身体が喜んで弾んでいる。

 朱羽に触られて嬉しくてたまらないという、女の顔をしている。

 朱羽の反対の指がショーツの端を往復し、ぶるぶると身体が震えた。


「鏡見て。腰動いてるよ、陽菜」

 鏡の中のあたしは朱羽を煽っているように、気持ちよさそうで、もっと気持ちよくなりたそうで、見ている方がたまらない。

 あたし、朱羽の前だと……あんな顔でせがんでいるんだ。

 あんなに無防備に、朱羽を信じてやまない顔で。

 嬉しい反面恥ずかしくて、鏡から顔を背けるように、はだけた朱羽の胸に頬を擦りつけた。ほどよく筋肉がついた肌が気持ちいい。胸に唇をつけながら、男らしい腹筋を指で触れる。

 好き。

 朱羽が好き。


「……ふぅ」

 上からため息が落とされる。

 見上げると、朱羽が前髪を揺らしながら、苦しげな瞳を揺らしていた。
 
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