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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 

「やだ……朱羽の声みたいに思えてきちゃう……」


 あたしの妄想からくる幻聴だろうと思うのに、あたしは浴槽の中で足を摺り合わせて、乱れた呼吸を繰り返す。


『好きだ……よ……』


 駄目だ。


『好き、だ……』


 この鼻にかかったような甘い声に、ドキドキが止まらない。

 苦しい――。


 あたし、朱羽とのピンク色の妄想にのぼせちゃう。朱羽があたしに好きだと囁いて、繋げているのだと……そんな風に思ってしまう。

 久遠の湯で、永遠にセックスしたいなんてそんな淫らな願いじゃない。妄想を退散させなきゃ!


 そう思いながら、声がする方向にすぃ~と泳ぐようにして向かう。

 それは滝とは反対奥。


 そしてあたしは見た。


 奥にもあった洗い場。

 そこに膝立ちしながら、片手で鏡を抑えるように前傾姿勢になった……。


「……朱羽だ!!」


 なんでここにいるのか、そんな疑問が思い浮かぶよりも早く、あたしの動きが止まったのは。


『ヒナ……』


 項垂れる朱羽が切なそうにあたしの名前を呼んでいたからだ。

 あたしはわかったのだ。

 ……盛り上がった筋肉を見せる彼の右手が、なにをしているか。

 ドキドキしすぎて、朱羽に見つからないように息を押し殺し、あたしは大きな岩間に隠れた。


 朱羽があたしの名前を呼んで、ひとりでしてる――。


 身体が熱くなる。

 見てはいけないものを見てしまった背徳感はあるけれど、彼への愛おしさが募ってたまらない。

 綺麗だった。いやらしいとかそういうことは全く思わず、あたしの名前を呼んでしているのが、心が奮えるほどに嬉しくて、同時に切ない。

 そこまであたしを求めてくれていたの?

 それなのに約束だからと我慢してくれていたの?

 ひとりでこっそりするくらい、切羽詰まっていたの?


『ヒナ……っ』


 艶めいた朱羽の声。秘部からなにかが呼応したように零れて、じゅんじゅんと疼いている。

 たまらなくなり黒い茂みの奥に指を滑らせると、そこはぬめったものが溢れ出ていて、洪水状態だった。
 
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