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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon

このひとは上司で、鉄仮面で。
どこまでも器が大きくてあたしよりよほど大人で。
だけど、隠れてこんなことをするなんて、どこまでも可愛い男。
両膝をついたままの状態でじりと朱羽が後退し、じりとあたしは足を進める。
その距離、広げてなんてあげない。
あたしも両膝をついて、真っ赤な顔をして目を合わせようとしない朱羽の双肩を掴んで言う。
「選んで、朱羽」
……知らぬふりをして、逃してなんてあげない。
だって心から嬉しいと思ったもの。それをひとりですませて、きっと……あたしに黙って、なにもなかったようにするのだと思えば、そんなの許せない。……あたしを求めた証拠をなくすなんて許さない。そんなクールさなんていらない。
「そのまま、あたしの目の前で最後までするか、あたしの手で果てるか、それともあたしの口で果てるか、それとも……展望台室での続きをするか」
両手を伸ばして、朱羽の顔をあたしの正面に向ける。
「選んで。それ以外は駄目」
「陽菜……っ」
眼鏡をとった、少し怯んだような目の奥に秘めている直情は、偽りなき、欲情の光。ゆらゆら揺れているのは理性なの? 揺れなくてもいいよ、まっすぐあたしに来てよ。
あたしは固まったままの朱羽に抱きつき、朱羽の胸の蕾を舌で転がす。
びくっと朱羽の身体が震える。
ぷくりと膨らんだその蕾が愛おしくて、朱羽がしてくれるように吸い付けば、朱羽の口からまた悩ましい声が零れ落ちた。
蕾から口を離すと、朱羽は目の元を上気させて、艶めいた顔をしながらもこちらを気怠げに見ている。
弱々しく潤んだ瞳がたまらない。
これならまるで小動物だ。
強気に出れない理由もわかるから、あたしはその小動物が逃げてしまわないように、心の中でおいておいでと指を振りながら笑って言う。
「朱羽、あたしを見て?」
「……っ」
羞恥なのか顔を背ける朱羽の鎖骨あたりから首筋、耳まで赤い。
言葉にしなくても、彼の身体は素直な感情を露呈している。
あたしなんか足元にも及ばない、色々な超絶さを鎧のように身に纏っているのに、生身の彼はこんなに無防備で。
秘密ごとさらけ出したあたしを受け入れてくれたように、あたしもまた、この噎せ返るほどの色香を放つ可愛い彼を受け入れることに躊躇いはない。

