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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
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「あらま、陽菜が一日中現場の仕事してる~。卒業してなかったっけ?」
画面を睨み付けるようにして、バチバチキーボードを打ってるあたしの横で衣里が、身を屈めながら珈琲牛乳をちゅうちゅう音をたてて飲んだ。
「あたしはね、仕事の分量をちゃんと考えて、誰にもストレスためさせずに、皆がゆっくりとでも成長して協力出来るように、愛を持って指導してきたはずなのに、なによあの横暴上司! 入ったばかりで、あたしをこき使うなんて! プログラムなんて、すっかり忘れて進まないったら!」
キーキーするあたしの横でちぅ~と音がする。
「デザイン課もシステム課も似たような感じね、なんだか鬼気迫った表情。なんでそんなに急いでるのかしら。だったらほら、杏奈に言えばぱっと出来るよ、きっと」
「そんなぱっと出来るものがあたしに出来ないのが嫌! 絶対、自力で出来ないだろうと思われてるに違いないから、杏奈に頼むのが嫌!! ああ、関数忘れた~!」
「こき使うなと言えば、こき使うのね、あの課長。そういえばずっと上? 販売と営業との会議。私は予定入ってたから途中抜けて今帰りだけど、行かないで後で結城に聞こっと」
「ねぇ、上でなにを話しているの? 仕事教えてって?」
「いや、事後報告みたいな指示」
「入ったばかりで営業に指示!?」
「なんでもあんたを頼る営業は非効率だとか、今度はあんたがいなくても営業できる方法にするとか。結城、10インチのタブレット日付指定で、社員数分注文させられたところを見ながら外出たけど。先に社長許可とってたみたい」
「タブレット?」
あたしは思わず衣里を見た。
「そう、営業で必要になるらしいわ。結城もスマホで用足りるからタブレットを使ったことなくて、そうしたらあさっての午前中到着次第、あの課長自らがどう使うかレクチャーだって。私も結城も、それを使ってどうしたいのかが見えないから、様子見」
「培ってきたものを壊す気か!? 効率よくなるどころか、戸惑い過ぎて効率悪くなるっちゅーの!!」
ダンダンダン!
「陽菜、残業予定通り?」
ちぅ~。
「そ! 絶対これ、五時半までに終わらせてやるんだから! 鹿沼陽菜、この下積みOLをなめるでわないわ!」
あたしはひたすらプログラムを打ち続けた。