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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
 

 ***


 超ハードな仕事を、就業五時半できっちりと終わらせた時、二階から人が降りてきた。

 結城ら営業部の社員と香月課長だ。

 香月課長はいつもの通り涼しい面持ちで帰ってきたが、さすがの結城も疲れ切った表情だ。一体なにを会議していたのだろう、あとで結城に聞いてみようか。

 就業にかかる音楽を聞きながら、隣に戻った課長ににこやかスマイル。

「PHP、余裕で出来上がっておりますので」


 本当は、数分前に出来たけれど。

 ちょっとシステム課に聞いたり、ネットで調べちゃった難産のものだったけれど。


「では明日は、木島くんが出来ていないところをお願いしますね」

 お疲れ様でしたもなく、部下の補助に入れと冷笑。

「主任が出来る方で助かりましたね。さあ、皆さん。残業しないで今日もお帰り下さいと社長命令です。お疲れ様でした」

 ……。

「では鹿沼主任。残業に入りましょう」

 ……。

 いいけどさ、いいけど!!

 
「あ、香月課長! 営業、私と結城が残業してます!」


 衣里が手をあげて言った。あ、また木島くん杏奈と帰るんだ。

 結城は……タバコでも吸いに行ってるか。


「わかりました」


 いとも簡単に香月課長はそれを許容した。

 あたしには衣里と結城がいるもんね!


「では始めましょうか」


 ミーティングルームに数冊のファイル。


「今日は込み入るので、ファイルはまだあります」


 ほらほら疲れてるでしょう?
 やめてもいいよ? いや、満月過ぎるまでやめておこうよ。

 あたしプログラムで目がチカチカで、ヘロヘロなんだよ。

 見てわかるでしょう、目が死んでるの。



 彼は言った。


「ああ、では……資料室でやりましょうか」


 残業をやめるどころか、個室での残業を提案して。

 そしてそういう時に限って、衣里も結城もフロアにいない。休憩室、なんでそんな奥にあるんだ!


 衣里っ、結城っ、あたしを助けて――っ!!


 だけど、


「さあ、いきましょう。さあ荷物を持って」


 役立たずのふたりから応答ないまま、あたしは課長に連れられた。

 

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