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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 
 あたしはなにも言えなくなる。そんなあたしに、意地悪げな顔をして朱羽は、手のひらを見せた。

「ねぇ、見える? 俺の親指濡れてるだろ? なんで濡れたと思う?」

 それは……。

 朱羽は赤くなるあたしに見せつけるようにして、なんと口に含んだのだ。

 艶めいた流し目をくれながら、わざとくねらせた舌を見せて、根元から指先まで何度も舐め上げる。

 いやらしい。

 どこの蜜かわかっていて、あたしの反応を窺うようなそんな目であたしを見ないでよ。

 ああ、とってもいやらしいよ。


 そんな朱羽を見ているだけで、蜜の源は新たな蜜を零して疼く。


「本当にあなたはいやらしいね。こうやって俺の舌で舐めてほしかったの?」

「違……っ」

「本当に? あなたは好きだものね。俺に舐められるの」

「っ!!!」

「ははは、正直。真っ赤になっちゃって。……そうなんだ、好きなのか」

 悔しい悔しい悔しい。

「本当にいやらしい、鹿沼さん。会社でこんなあなたを、誰が想像するかな。ああ、結城さんは除いて、だけど」

「あ、あたしだって」

 素直に認めたくないあたしの女心。

「朱羽の目がなかったらこんなこと!」

「俺の目?」

「見られてると思ったら、その……」

 社会人の心得。

 自分に非があったら、素直に認めましょう。

 なにかのせいにしたら、必ず報いが返ります……わかってはいるけど、素直に認められないのは、あたしのいじっぱりのせい。

「……ふぅん? あんな大胆なことをしたのは、俺の目のせいにするんだ」

 朱羽があたしのお腹あたりを、手でまさぐる。

「だったら、俺の目がなければ、あなたは大胆にならずにいやらしくもならないというんだね?」

 しゅるしゅるしゅる~。

 帯が解かれ、腹部に風が入った……と同時に、あたしの視界が暗くなる。

「ふふふ、視界を遮ったよ。だったら、あなたの言い訳が正しいか、試そうね」

 あたしは、自分が巻いていた帯で目隠しをされたのだった。
 
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