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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
急に視界はほんのりとオレンジがかった暗闇に覆われ、さらに朱羽が身体を引いたために、あたしの身体が感じる朱羽の存在が消失する。
あたしは布団の上に膝立ちになった状態のまま、消えてしまった朱羽の温もりを探すように手を宙に彷徨わせて、朱羽を呼んだ。
「朱羽? ねぇ、いる?」
返事がない。
「ねぇ、朱羽、返事をして?」
静まりかえった部屋の中、見えないという状況があたしを不安にさせる。
真っ暗な寝室で目覚めた時のような、無重力の中に浮いているかのような不安定な精神状態。
まるで朱羽と睦み合っていることが、……満月のことを受け入れてくれたこと自体が、あたしの欲求が見せた都合よい幻であったかのような、そんな非現実的な感覚――。
「朱羽! 朱羽が元から居ないようで怖い。ねぇ、返事を……」
「いるよ」
朱羽の声の響きを、いつも以上に耳が聞き取った。
「あなたの前に。おっと……駄目。触らないで、そのままで俺を感じて?」
少しだけ上擦っているような彼の声音、囁くような甘やかな声。彼の呼吸が時折乱れていることも、今のあたしの耳は感じ取れ、朱羽が息づいていることをよく感じ取った。
「ねぇ、この目隠し取ってよ」
「駄目。取ったらお仕置きにならない」
「でも……」
「ねぇ、知ってる? 人間は普通、視覚に80%も頼って生活しているんだって。視覚を遮ってしまうと、それまで20%しか使っていなかった他の感覚が目覚めて、敏感になる。ねぇ、あなたの耳は今、いつも以上によく聞こえない?」
「うん、よく聞こえるけど……」
朱羽がふっと笑っているような音が聞こえた。
「今ね、俺……あなたの身体を見てる。凄く艶めかしいよ、はだけた浴衣からあなたの生まれたままの姿がある」
「……っ!!!」
見られていると思うと、肌がちりちりと焼けるようだ。