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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 

 朱羽があたしの目の前で屈み込んだ気配がして、あたしは慌てた。

「朱羽、覗き込まないで! ねぇ!」

「目隠ししているのに見えるの?」

「見えない、けど……っ、やっぱり見てたの!? もう見ちゃ駄目!!」

「駄目じゃないだろう? 俺の手で胸を揉んで、垂らしたところを俺の手で拭き取らせていたくせに」

「拭き取らせ……っ!?」

「違うなら、なに? いやらしい蜜を俺につけて、どうする気だったの?」

「……っ、この、ドS!」

「ふふ、ありがとう。こんなに俺がなるのは、あなただけだよ? あなたが可愛すぎるから、虐めたくなる」

 このひとは。

 甘いカウンターパンチで、あたしを布団に沈める気か!

「はい、両手を上げて。ばんざーい」

 突然そう言われて、反射的に両手をあげる。

 朱羽の息遣いがすぐ傍に感じられたと思うと、背後であたしの浴衣の裾が持ち上げられ、ばんざいをした両手から抜き取られた。それだけではない。あたし頭の後ろで揃えて上げた両手の手首をくるくると巻いて固定してしまったのだ。即席の、浴衣の手枷だ。手が離れない。

「ねぇ、なに……っ」

「あなたが悪いんだよ、俺にちゃんと見せようとしないから。これでゆっくり見れるね」

 物音が、すべていつも以上に大きく耳に届く。

 朱羽の衣擦れの音に、やけに緊張する。

「………」

「………」

 しばし無言の中、朱羽の息づかいだけがやけに大きくあたしの耳に届く。朱羽はなにも言わない。

 じっとあたしの身体を見ているのだろうか。
 どの部分を見て、なにを思っているんだろうか。

 見られていると思ったら、羞恥に肌がさざめく。

 朱羽の目が。あの熱を帯びた茶色い瞳が。

 あたしの肌を舐め回すようにして見ていると思ったら……。


「……は、ぁ…っ」


 すべて妄想なのに、思わずあたしは身を捩らせながら、声を漏らすと、くすりと笑う声がした。
 
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