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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
「記憶、ないの? ハジメテの。セックスはしたんだろう?」
「元彼とした記憶がないの。だけど、満月のことがばれた時に、色々罵倒された内容が、セックスに関してだったから、多分……ハジメテでも、それ以降でも、あたしにとって元彼は記憶に残っちゃいけない存在なんだろうと思う。思い出したくないの、無性に。身体が震えて拒絶する。幸せな時もあったんだろうけれど、あたしにはそこに触れたいと思えないの」
「好き……だったの?」
「多分、ね。今となっては、それすらよくわからない。やっぱり、裏切られるってとっても辛いことだから」
あたしは朱羽に縋るようにしがみつくと、朱羽の手が全裸のままのあたしの背中に回る。
温かいから不意に不安になる。この温もりがいずれ消えちゃわないかと。
「朱羽は、満月のことを知っても傍にいてくれるよね? あいつみたいに、言いふらしたり気持ち悪いって……嫌いになって離れていかないよね?」
朱羽の唇があたしの額に落ち、その手があたしの後頭部を撫でる。
「信じて、俺は離れないよ。あなたが仮に殺人鬼だったとしたも、俺がやめさせてあげる。だから満月のことは、逃げるのではなく、一緒に解決していこう。これからはいい思い出に塗り替えればいい」
「……うん」
あたしの未来はどうなっているかわからない。
だけどあたしが進むの道に、朱羽が傍に居てくれたのなら……、それだけでその未来は明かりが差し込んでいる気がする。
ふっと朱羽が笑った。
「あなたを、九年前みたいに淫らにさせる満月問題が解決しても、あなたを全力で愛するのに手抜きはしないから、安心して」
「なっ」
朱羽はあたしの顔を覗き込みながら、その目をゆっくりと細める。
「言っただろう、狂わせてあげるって。これからの方が大変だよ?」
「ちょ、朱羽……っ」
Sだ、ドSだ!
なんで発動しちゃうのよ。
「九年前の俺とは違うよ? 特に……美味しそうに舐めているあなたは、もうわかっていると思うけど」
「――朱羽っ」
真っ赤になったあたしの頬を、親指で撫でながら朱羽は言う。
「なにを想像したの? 舌を絡めたキスのことだけど」
「!!!!」
「あはははは! いやらしいな、陽菜は」
「朱羽の方がいやらしいもん!」
絶対わかってて、あたし引っかけたに違いない!