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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
 

「な……ゲホゲホッ、なに……お前なに……ゲホゲホッ」

「なにその動揺。まさかそれで隠してるつもりだったの?」

「い、いつから!?」

「そんなの、ムーンに入った時から」

 さらに結城はむせた。

「だから言ってたじゃない。陽菜をあげないわよ、ただの友達で満足しろって。あんた私の言葉聞いてたの!?」

「いや、それ……本気だとは思ってなくて」

「私、あんたに冗談言うほど仲良しだったっけ、ん? それに陽菜に男が出来ないのは、あんたの暗躍のせいだって私知ってるし。陽菜に気がある男に先手打って呼び出して、なにしてたのよ。あんたがそんなことしてるおかげで、陽菜はすっかりおとぼけカワウソよ」

 結城は瓶をゴミ捨てに投げて、ぽりぽりと頭をかいた。


「言うなよ?」


 その顔はうっすらと赤い。

 なに可愛い男ぶってるのよ、28にもなって。


「わからない陽菜の方が変だと思うわ。あんたの恋路に異議を唱えるつもりもなければ、応援するつもりはないから。私に協力を求めないでね。ま、簡単に言えば、勝手に青春やってろ? みたいな」

「別にお前に助けを求める気はないけど、きっつー」

 結城は苦笑する。

「あんたがチャラかったら断固反対したけど、一応まがりなりとも6年営業の同期しているんだから、あんたは陽菜を傷つけないとわかっているからこそ、こう言うのよ。それとあんた達ふたりのプライベートがどれだけ進展しているかとか、根掘り葉掘り聞かないから安心して」

「ははは……」

「もうひとつ言えば、私はあんたのことどころじゃないの」

 どこか悲しげな目に、思わず私も自分のことを口にしてしまった。


「え?」

 結城なら人に広める男ではないから、触りだけならいいか。


「私は私のことで手一杯。言い方を変えれば、私はあんたと同じ立場だから、諦めろとか残酷なことをいうつもりはないわ。ちなみに、私は会社入る前からよ、我ながら忍耐力あると思うわ」

「は、お前……誰だよ、それ! お前、そんな素振り……」

「そりゃあ私だって色々あるし、大人なんだし。陽菜も知らないわ。こんな風に完璧に隠さなきゃ駄目よ、営業課長!」

 髪を掻き上げて笑い、先に行こうとしたら結城が言った。


「お前の目から見て、あの課長……どう思う?」

 
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