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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
「………」
「………」
だけどまあ、箱の真上くらい見てみようと、包装紙から抜いた小さな箱を転がした。
リアルな避妊具の絵。
0.01ミリの文字が、大きく迫力あるように書かれてある。
頭の中で、矢島社長の笑い声が響く。
「あ、あたしいらない。これあげる」
「お、俺にこれを持って帰れって!?」
「あたしが持ってた方がおかしいじゃん。まだ朱羽の方が」
「これ会社用のカバンだぞ? こんなの入っているの見つかった日には、俺変態扱いじゃないか」
「これ使うのは男でしょう!? そんなの持ってたらあたしの方が痴女じゃない。……よし、どこかで捨てていこう」
いい考えだと笑顔を作って朱羽を見たら、朱羽はレンズ越しじとりとした目をあたしに寄越して大きなため息をつくと、渋々と再度包装紙包装でそれを包み、袋に戻し、くるくると、とにかく中身がわからないようにくるくると丸めて、自分のカバンの中に入れ、あたしの耳に囁いた。
「今度、使おう」
「はあ!?」
「捨てるくらいなら、あなたと……使いたい。駄目?」
「あたしに聞くの!?」
あたしは小声で怒る。
「そう。決定権はあなたに。あなたが違う方がいいというなら、そうする」
「知るわけないじゃない、そんなもの!」
凄く顔が熱い。
「じゃあ今度これ使っていい?」
「だから聞かないでよ!!」
思わず睨んだら、朱羽は愉快そうに目を細めて笑っている。
くそっ、またSか。ドSですか!
ふんと横を向いて窓を見てると、腰のあたりに朱羽の手が巻き付いて、彼の隣にぴったりとくっつけられた。
長い足を組んだ、エリートイケメンが優しげな笑みであたしを見ている。
ああ、もう。
本当にもう。
あたしは口を尖らせながら、ウェストのところにある朱羽の手の上から手を重ねて、彼の肩に頭を乗せた。
あたしは……悔しいくらいに、このひとが好きだ。