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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
「あのさ、知ってた? 矢島社長と沼田さん、貰ったこれを愛用する仲なんだということに」
「はあああ!?」
――あなた、早く!
――このひともいいというから、いつもこれなのよ。
「夫婦なのか、恋人なのかわからないけれどね」
絶句する。
だけどあたし達を見送って手を振り続けてくれたふたりは、とても仲よさげに寄り添っていたのは確かだ。
どう見てもアンマッチなカップルと思えるけれど、仕事に忙しい社長を支えて理解があるから、あたし達との打ち合わせにも彼を同席させたのだろう。
プライベートも仕事も信頼出来るパートナーっていいなと思う。
……なりたいな、朱羽のパートナー。
まだまだなあたしだけれど、あたしが朱羽に支えられているように、あたしも彼を支えて上げることが出来ればいいな。
このひととずっと一緒に生きることができたらいいな。
車は駅を通って東側を走る。
大通りを走るバスが、やはりあたしの記憶のものとは違う運営会社のものとなっていたものの、この道は記憶がある。
駅から7つ目のバスの停留所に、高校があるはずだ。
停留所名は「扇谷高校前」。そしてそこから歩いて10分くらいのところに、あたしの実家がある。
夢で見たばかりだから、余計記憶がしっかりしているように思う。
そう朱羽に言うと、
「歩いて行ってみる? 高校から」
「え?」
「あなたが刺激を受けて見た夢の道を通ってみよう。なにかわかるかもしれない」
満月のこと――。
なんであたしは突然満月の日に、あんな色情狂に変貌してしまうのか。
あたしが忘れた記憶があるのだろうか。
思わず手が震撼すると、朱羽がその手を包むようにぎゅっと握った。
「大丈夫。俺がいるから。なにがあっても俺は傍を離れないよ」
「……ありがとう」
涙が出そうになり言葉が震えたが、腰から肩に移動した朱羽の手が優しくあたしを撫でてくれたから、あたしは深呼吸をした。