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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
 

「あなたのご家族から、お話を聞こう。あなたが故意的に思い出さないようにしていたあなたの家族なら、案外よくわかっているのかもしれない。あなたは、第三者によって記憶を封じられているのかもしれない。だからあなたの記憶には整合性がない部分がある」

 否定できない。

 あたしの記憶は、こうして事実と齟齬しているところがあるのだから。

「……なにか怖い。怖いけど……」

 あたしは朱羽を見た。

「あたしの記憶が誰かに操作されていたのだというのなら、本当のものを取り戻したい。それが嫌なことでも、偽物の記憶だけは持ちたくない」

「朱羽」

「………」

「逃げている時間は、もう終わった気がする。そこを避けて通るのではなく、あたしはちゃんと見て前を進みたい」

「陽菜……」

「だけど怖いの。怖いから……手を握っていて」

「ああ」



 ……あたし達は歩いていく。

 実家という故郷が、まるで魔物の巣窟のように思える。

 実家になにがあるんだろう。

 家族はあたしのなにを知っているのだろう。


 遊具がない小さな公園。

 コンクリート塀で挟まれた緩やかな上り坂。


 車が行き交う三叉路。


 気分が悪い。

 頭がずきすぎする。


「陽菜……」

「大丈夫。行く、行きたいの。あたしは……知らなきゃ。忘れていたことを」
 
 もう少しだ。


「三叉路を抜けた、二軒奥隣が――」


 冷や汗をかきながら歩いているあたしは絶句した。


「え、なんで……?」


 あたしの実家がなかった。

 そこには、隣角の家の花や自家栽培の畑になっていたのだ。

 
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